近年、MLBの試合が日本でも放送されるようになり、テレビ中継やニュースで
「40人ロースター」「アクティブロースター」「DFA」といった用語を耳にする機会が増えました。
しかし、普段NPBを中心に観戦している方々にとって、
MLBのロースター制度は複雑に感じる部分もあるかと思います。
筆者もMLBを見始めた当初、選手の入れ替えや契約の仕組みがわからず困惑した経験があります。
本記事では、NPBとの比較を交えながら、
MLBのロースター制度をキーワードごとにわかりやすく解説していきます。
また、当ブログではNPBファン歴20年の筆者が「MLB初心者」の方に向けて、
より一層NPBもMLBも楽しめるようになってもらえることを目指しています。
本記事では「ロースター制度」の内容を中心としていますが、
下記の記事はこれ1本さえ見ればMLBの全体像が理解できる!というものになっておりますので、
合わせて是非ご参考ください!
★【MLB入門】まずはここから!!シーズンの流れに沿ってMLBを徹底解説!
NPBとMLBのロースター制度の違い【対比表】
NPBとMLBの選手登録に関する違いはざっと下記のようにまとめることができます。
詳細は後程解説しますので、ここはさらっと目を通していただけますと幸いです。
項目 | NPB | MLB |
---|---|---|
一軍枠 | 29人(ベンチ入りは25人) | 26人ロースター(9月は最大28人) |
保有選手枠 | 支配下70人 | 40人ロースター |
マイナーとの入れ替え | 制限なし | オプションが3年分まで使用可 |
DFA(戦力外通告) | 明確な制度なし | 40人枠から外す手続き。 7日以内に去就決定 |
年俸調停 | 制度なし(球団と都度交渉) | サービスタイム3年以上で権利発生 |
FA取得年数 | 9年(国内) | サービスタイム6年 |
MLBロースター制度の基礎
「ロースター」とはチームの公式戦に出場できる資格を持つ選手登録枠数を指します。
その中でも選手登録は大きく分けて「40人ロースター」と「26人ロースター」に分かれます。
以下それらの違いについてわかりやすく解説していきます。
40人ロースター
40人ロースターとは、「メジャー契約」を結んでいる選手全体の枠です。
NPBで言うと「支配下登録枠(育成登録以外の選手)」に該当します。
この40人枠に入っていない選手はメジャー昇格できません。
また、トレードでの選手獲得やマイナーからの昇格時にはまずこの枠を空ける必要があります。
40人ロースターに入っている選手は形式上メジャーリーガーとして扱われますが、
その中でもこの後説明する「26人ロースター枠」から外れている最大14名の選手については
主にマイナーリーグの試合に出場することになります。
ただし、同じマイナーリーグに出場している選手でも
この40人ロースター枠に入っているか否かで
年俸の最低保証額(約1億円)やメジャー昇格のしやすさに雲泥の差があります。
26人ロースター(別名:アクティブロースター)
26人ロースターとは実際にMLBの公式戦にベンチ入りすることができる選手の枠で、
NPBの一軍登録選手をイメージしていただくとわかりやすいです。
ただし、NPBの一軍登録枠は29人(内4人がベンチ外)のため、
MLBの登録枠26人はNPBと比較すると登録枠が3人分少なくなります。
上記の通りMLBでは登録選手が少ないことに加え、ベンチ外枠というものも存在しないため、
先発投手は中4日で5人で回すケースが一般的です。
その点がNPBの先発投手がMLBに挑戦する際の大きな壁になります。
ただし、その分先発投手の球数制限は徹底されており、例え良いピッチングが続いていた場合でも
球数がかさんだ場合には、次回登板に向けて早めに降板するケースが多くなります。
「26人ロースター」の内訳は投手13人/野手13人となり、
【投手:13人 捕手:2人 内野手:6~7人 外野手:4~5人】となるケースが一般的です。
この通りNPBと比較して野手の控えの選手枠も少なくなるため、
複数ポジションを守れるユーティリティプレイヤーがより重宝されます。
その他のポイントとしては、毎年9月にロースター枠の拡張が実施され登録人数が28人となり、
各球団「新戦力の投入」や「投手陣の負担軽減」に動き、シーズン終盤に向かっていきます。
ここまで読んでいただき、
「登録枠が少ないのであれば、積極的に選手をメジャーとマイナーで入れ替えて戦う方が有効では?」と感じた方もいらっしゃるかと思います。
しかし、選手をロースター枠から外す際には様々な制約が存在します。
ここからは「26人ロースター」から外す際の「マイナーオプション」について解説します。
マイナー降格とマイナーオプション制度とは?
MLBの選手を「26人ロースター」から外す(マイナーに降格させること)については
「マイナーオプション制度」が非常に深く関わってきます。
マイナーオプション制度とは?
マイナーオプション制度とは、26人枠に入っている選手を1シーズンに限り
「何度でも」メジャーとマイナーを行き来させる(26人枠から外す)ことができる制度です。
裏を返すと、この「マイナーオプション制度」を活用しなければ
球団は自由に選手を26人枠から外す(マイナーに落とす)ことができません。
10日間の抹消期間を除き、自由に1軍と2軍を入れ替えられるNPBとは大きな違いがあります。
マイナーオプションは選手がMLBに昇格した段階で3年分付与され、
1シーズンで20日以上マイナーで過ごした際に1年分消化されます。
同じシーズン中に1年以上オプションが消化されることは無いため、
そのシーズンに限ってはその選手を自由にマイナー(26人ロースター外)に
落とすことができると言えます。
ではトレードで選手を補強したり、故障者が発生して特定の選手を緊急昇格させたい場合など、
オプションを失った選手を「どうしてもマイナーに落としたいとき」はどうすればよいのでしょうか。
その際に使用される制度こそがDFA(Designated for Assignment)です。
DFAとは何か?戦力外との違いとその流れ
DFA(Designated for Assignment)は、
マイナーオプションを失った選手をロースターから外す手続きのことを指します。
マイナーオプションを失った段階で26人ロースターから外すことはできなくなり、
一気に40人ロースターから外す「DFA」が必要になります。
日本で「DFA」は「事実上の戦力外通告」と表現されるケースが多いですが、
即解雇ではなく、次のような流れで処遇が決定されます。
DFA後の流れ
- 他球団にトレード交渉(7日以内)
- ウェーバー公示(2日間):他球団から獲得の要望があれば移籍先の40人枠に入る形で移籍
- 獲得を希望する球団が現れなかった場合に、その選手はマイナーに降格しロースターから外れる
※メジャーで5シーズン以上過ごし、マイナー拒否権を取得していればFA可能
このように「DFA」には日本の「戦力外通告」という一面だけでなく、
マイナーオプションが無くなった選手に、
他球団との交渉機会を与えることで、その選手の出場機会を広げるという側面があります。
実際に契約内容を移籍先の球団と選手が直接交渉するわけではありませんが、
移籍先の球団には戦力として必要とされた上で移籍するため、
前所属球団よりも出場機会が増加する傾向にあります。
自由にマイナー降格できないようにする「マイナーオプション」という制度は
球団側にその選手を「DFA」するという選択肢を提示し、
有望な選手にチャンスが与えられず、メジャーとマイナーを行ったり来たりして
塩漬けにされるというリスクを可能な限り軽減した「選手のための制度」であると言えます。
「DFAされた」裏側にはその選手だけでなく、
環境も踏まえた球団の複雑な思惑が含まれていることを理解しておきましょう。
内容を紐解くと本当は残しておきたい戦力を、泣く泣くDFAしているというケースも少なくありません。
また前述の通り、DFAはマイナーオプションを失った選手を26人ロースターから外すだけでなく、
40人ロースターから選手を外す際にも実施されることとなります。
そのため、40人ロースター枠の選手をロースター枠から外す際には1回目からDFAが実施されます。
番外編:大谷翔平選手と「Two-Way Player」制度
MLBのロースター制度には、2020年から新たに
「Two-Way Player(二刀流選手)」という特例制度が設けられています。
これは、「大谷翔平」選手のように「投手」としても「打者」としても
出場する選手を公式に認定する制度で、彼の活躍がルール整備のきっかけとなりました。
Two-Way Playerの要件
直近の2シーズンで
- 投手として20イニング以上の登板
- 打者として20試合以上出場かつ出場試合で平均3打席以上出場
ロースター上のメリット
通常、MLBでは試合ごとに投手は最大13人までという制限がありますが、
「Two-Way Player」に認定された選手はその人数制限とは別に扱われます。
つまり、大谷選手を登録していても、投手枠を1人分節約できるのです。
大谷翔平選手の影響力
この制度は、まさに大谷選手の存在によって生まれた“特例ルール”といっても過言ではありません。
彼のようなスタイルを追いかける若手選手の登場も期待されており、
MLBにおける「ロースター管理の戦略」をさらに多様化させています。
まとめ:NPBとの大きな違いとMLBの面白さ
MLBのロースター制度は一見すると複雑ですが、
仕組みを理解すれば選手の起用や移籍、DFAの背景が見えてきます。
NPBとの違いを知ることで、MLB観戦がより戦略的に、そして楽しくなるでしょう。
今後もMLB初心者の方にもわかりやすく
各種制度を解説してまいりますので、気になる制度などがあれば是非コメントで教えてください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!!
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