最近、MLB(メジャーリーグベースボール)が日本のメディアでも頻繁に取り上げられるようになってきました。大谷翔平選手の活躍や、山本由伸投手のメジャー挑戦などをきっかけに、これまでNPB(日本プロ野球)を中心に観てきた方の中にも、「MLBもちょっと気になるな」と思う人が増えてきているのではないでしょうか。
かくいう筆者も、約20年間NPBを観てきた野球ファンの1人です。これまでは日本の野球だけで十分楽しめていたのですが、ここ最近MLBの試合や移籍ニュースに触れるうちに、「あれ?NPBとMLBって全然仕組みが違うぞ?」と感じるようになりました。
ただ、いざMLBについて調べようとしても、NPBファン向けに分かりやすくまとめられた情報は少なく、専門用語や制度が多くて挫折しそうになることも…。そこで本ブログでは、「NPBが好きな人がMLBを楽しむための入り口」として、筆者が調べたMLBの制度や文化を紹介していきます。
NPBとMLBの大きな違い:『贅沢税』という考え方
今回はMLBを語る上で避けて通れない「贅沢税(Luxury Tax)」について取り上げます。NPBではあまり耳にすることがないこの制度、実はMLBのチーム編成や戦力バランスに深く関わっている重要な制度なんです。
贅沢税とは?
MLBでは、各球団が選手に支払う年俸総額に対して「一定の上限(しきい値)」が設定されています。この上限を超えた場合、その球団は『贅沢税』という追加の支払いを課される仕組みになっています。
この制度の正式名称は「Competitive Balance Tax(CBT:戦力均衡税)」といいます。目的は、資金力のある大都市の球団ばかりが有力選手を獲得して強くなりすぎないようにし、リーグ全体の戦力バランスを保つことです。
どれくらいで課税されるのか?
贅沢税には毎年しきい値(基準額)が設定され、たとえば2024年の場合は $237M(約370億円) が基準でした。これを超えると、超過額に応じて下記のような段階的な課税が行われます。
- 初回:20%
- 2年連続:30%
- 3年連続以上:50%
さらに、超過額が$20Mや$40Mを超えると「超過ペナルティ」としてドラフト指名順位の繰り下げやさらなる課税が加わることもあります。
NPBには贅沢税がない
一方、NPBではこのような制度は存在しません。資金力に差があるのはMLBと同様ですが、国内外の移籍市場やFA制度の構造が異なるため、球団ごとの年俸格差は存在するものの、直接的な「罰金制度」は導入されていません。
そのため、NPBでは戦力均衡を図るために「ドラフト制度」や「外国人枠」など別の制度が大きな役割を果たしています。
過去の贅沢税に関するトピック
ドジャースの重課税時代(2013〜2017年)
ロサンゼルス・ドジャースは2013年に資金力を武器に大型補強を行い、一時は贅沢税だけで$150M(約230億円以上)を支払ったこともある球団です。特に2015年には、年俸総額が$300Mを超え、MLB史上最高額の贅沢税が課されたと話題になりました。
この時期のドジャースは「勝つためなら税金もいとわない」スタイルでしたが、近年はチーム育成の強化や若手の台頭により、贅沢税を避けつつ戦力を維持する方向にシフトしています。
ニューヨーク・ヤンキースとボストン・レッドソックスの常連ぶり
これらの伝統球団も過去に何度も贅沢税を支払ってきた常連です。特に2000年代前半は、ヤンキースが年俸総額の大半をスター選手に費やしていたことで有名です。
しかし現在は、贅沢税を「抑えること」も経営戦略の一環とされ、球団が“コスパの良い戦力構成”を模索する時代に突入しています。
サンディエゴ・パドレスの急成長と赤字問題(2023年)
ここ数年、パドレスはドジャースに対抗する形で大型補強を続けてきました。しかし、2023年シーズンには年俸の増加が経営を圧迫し、贅沢税の支払いと財務の赤字が問題化。一部報道では、「収入以上に選手へ投資しすぎた」という指摘もありました。
結果、2024年オフには主力選手の放出や人件費削減に踏み切る形となり、贅沢税が経営に及ぼす影響を痛感させられる事例となりました。
贅沢税はMLB観戦の視点を変える?
このように、贅沢税という制度はただの「罰金」ではなく、球団のチーム編成、育成方針、経営戦略すべてに関わってくる要素です。
NPBファンにとっては、「この球団はなぜあの選手を放出したのか?」「なぜ若手を使い続けるのか?」といった疑問も、贅沢税の視点から見れば「なるほど」と納得できることが多いかもしれません。
まとめ|MLBの面白さは『制度の奥深さ』にもある
MLBはNPBと比べてルールや制度が多く、最初はとっつきにくく感じるかもしれません。しかし、こうした制度を少しずつ理解していくと、各球団の戦略や背景にあるストーリーが見えてきて、観戦の楽しさが何倍にも広がります。
今回の記事では贅沢税をテーマにしましたが、他にもMLBならではの制度はまだまだあります。もし「この制度についてもっと詳しく知りたい!」というテーマがあれば、ぜひコメント欄などで教えてください。次回以降の記事で取り上げていきたいと思います!
コメント