【NPBファンのためのMLB入門】まずはここから!!シーズンの流れに沿ってMLBを徹底解説!

MLBルール

最近、日本でも日本人メジャーリーガーの活躍を中心に
MLB(メジャーリーグベースボール)に関する報道が急増しています。
筆者も約20年間NPB(日本プロ野球)を観てきたファンですが、
「MLBをもっと楽しみたい!」と思うようになった一人です。

しかし、いざMLBを観ようとすると、
「ロースターって何?」「DFAって?事実上の戦力外とはどういう意味?」などと、
NPBとの違いに困惑する方も多いのではないでしょうか。

当ブログではMLBに関する速報だけでなく、MLB初心者の方がNPBとの違いを知り、
より一層NPBもMLBも楽しめるようになってもらえることを目指しています。
今回の記事1本を最後までお読みいただくと各種制度を含め、
存分にMLBが楽しめるようになりますので、ぜひ最後までお付き合いください。

各トピックスにはより深堀した記事のリンクも追記していきますので、
そちらも読んでもらえると非常にうれしいです!!

まずはここを押さえよう!NPBとMLBの大きな違い

下記の内容を中心にシーズンの流れに沿って各制度の解説を行います。
ここではさらっと目を通していただけますと幸いです。

カテゴリNPBMLB
試合登録人数29人(ベンチ25人)26人(9月以降28人)
支配下登録数最大70人(+育成選手)40人
故障者発生時の対応登録抹消IL入り(上記登録者と別枠扱い)
トレード文化消極的活発(特に7月)
FA制度国内9年/海外8年MLB在籍6年
年俸調停なし3年目以降に適用あり
ドラフト制度抽選とウェーバー制・シーズンオフ完全ウェーバー制・7月
オフの移籍市場比較的少ないFA・トレードなど移籍が活発

目次

  1. スプリングトレーニング(2月〜3月)とロースター枠
  2. シーズン開幕(4月) ILとDFA制度
  3. シーズン中盤(7月) トレード・ドラフト・オールスター
  4. シーズン終盤(8月〜11月) プレーオフとロースター拡大
  5. シーズンオフ(12月) FA・契約更改・ルール5ドラフト

1. スプリングトレーニング(2月〜3月) ロースター枠

NPBではキャンプとオープン戦が行われるこの時期、
MLBでは「スプリングトレーニング」と呼ばれる実戦形式のキャンプが行われます。

「スプリングトレーニング」の目的はチームの連携強化という側面もありますが、
1年間MLBで戦う選手たちを「ロースター枠」に沿って選ぶ場でもあります。
ここではMLBを楽しむ上で必須となる「ロースター枠」について説解説します。

(1)ロースター枠

ロースター枠は下記の2つにわけることができます。

  • 40人ロースター:チームの公式登録枠。
  • 26人ロースター:メジャーリーグの試合に出場可能な登録枠。投手/野手各13人の登録が一般的。

NPBでいうところの支配下登録枠が40人ロースター、1軍登録が26人ロースターとなります。

MLBNPB
MLB(1軍)の試合に出場可能な選手26人ロースター29人(内4人はベンチ外)
支配下登録数40人ロースター70人
支配下登録外40人ロースター以外の選手育成枠

上記の表の通り、MLBではNPBの支配下登録数(70人)より
大幅に少ない人数でシーズンを戦っていくこととなります。

また、40人/26人ロースターの選手の入れ替えに関しても回数などの規制が多く
限られた選手で戦うことがより重要になっています。

なお、大谷選手の活躍によりロースター枠には
Two Way Player」という特例制度も新設されています。

ロースター内での昇格/降格の詳しい規制内容の詳細や「Two Way Player」については
下記の記事で解説しておりますので、ぜひ合わせてご確認ください!

【MLB初心者向け】ロースター制度を徹底解説!!

2. シーズン開幕(4月) IL(負傷者リスト)とDFA制度

(1)「IL (Injured List)」

シーズン開幕後、チーム内では選手の負傷や不振によってロースターの入れ替えが活発になります。

シーズン中に故障し、試合に出られなくなった選手は「IL(Injured List)」に入れることができます。

「IL」には10日間(野手のみ)/15日間(投手のみ)/60日間(投手/野手両方)の3種類があり、
それぞれ試合に出場することのできない期間を指します。

選手を「IL」に入れることで選手をマイナーに落とすことなく、
「26人ロースター」の人数を増やすことが可能になり、
その穴を補う選手を新たに「26人ロースター」に加える
ことができます。

ただし、仮に上記「IL」の期間中にケガが完治した場合でも
それぞれの期間内は試合に出場することができません。

そのため、5日間程度の軽傷であれば、あえて「IL」に入れないというケースもあります。

なお、60日ILは40人ロースターからの除外も可能になるため、
球団側は選手に【全治30日】の負傷が発生した際に、
①60日IL入りさせて新戦力を登録する ②15日ILに入れて、完治後即試合に出場させる
上記のような判断に迫られます。

実際に2025年シーズンにてロサンゼルス・ドジャースの
「佐々木朗希」選手が全治30日程度の離脱を余儀なくされた際、
球団側には60日ILに入れる選択肢もありましたが、
最終的には15日ILで早期の復帰を目指すこととなりました。

(2)「DFA (Designated for Assignment)」

続いて日本のメディアでもよく取り上げられる
DFA(Designated for Assignment)について解説します。

DFAは日本では「事実上の戦力外」と表現されるケースが多いですが、
そこにはMLBの複雑なロースター枠の制度がかかわっています。

MLBでは選手を26人ロースターから外す際に一定の規制が存在します。
例えば、同じ選手が4シーズン以上メジャーとマイナーを行き来することができないようにする制度
(マイナーオプション)や5シーズン以上メジャーでロースターに残り続けた選手には
マイナー拒否権が付与される
といった制度があります。

上記の規制を無視して選手をマイナーに落とすことはできず、
それでも球団が選手を26人ロースター枠から外したいという場合に
「DFA」という制度を活用する必要があります。

DFAされた選手は2日間他球団が自由に獲得を申し出ることができるようになります。

仮に複数球団が獲得に名乗り出た場合、
その中の勝率の低い球団が優先され、その後移籍先の40人枠に入ることになります。

この2日間のウェーバー期間を通過した選手はマイナー降格をさせることが可能になりますが、
メジャーで5シーズン以上過ごしている選手はマイナー拒否権を持つため、
自らFAして他球団に移籍することが可能になります。

このように球団はシーズン中のトラブルに対して「ILに入れるべきか」「ILに入れるなら何日間入れるか」「その間に昇格する選手は誰にするか」「IL入りした選手が戻ってきた際には誰をマイナーに落とすか」「その選手のマイナーオプションはどうなっているか」など多くの判断を下すことになります。

このDFAやロースター枠の規制はNPBにはない制度のため、
初心者の方は困惑する場合も多いと思います。

これらの制度は有望な選手が各球団で出場機会に恵まれず塩漬けにされたり、
便利屋として使われないように選手を守るための制度です。
試合に出られない選手は他球団に積極的に放出して活躍の場を与える。

契約主義・個人主義のアメリカだからこその制度であるとも言えます。
日本でも近年「現役ドラフト」という制度が注目されていますが、
この制度の活用の幅も広がり、新たなスター選手が生まれることに期待したいと思います。

3. シーズン中盤(7月) トレード・ドラフト・オールスター

7月はシーズンの折り返し地点であり、各種イベントが集中します。

  • MLBドラフト:高校生・大学生・ジュニアカレッジの選手が対象。
  • トレード期限:7月末前後。ワールドシリーズを狙うチームが即戦力を補強。
  • オールスター:7月中旬に開催。ホームランダービーも見どころ。

(1)MLBドラフト

日本ではシーズンの終了後に実施されるドラフト会議ですが、
アメリカでは6月末に学期末を迎えるため、この時期にドラフト会議が行われます。
ただし指名された選手が各球団でプレーできるようになるのは来シーズンからということになります。

MLBドラフトの指名方法について、
以前は勝率の低い下位球団から順に指名する制度をとっていましたが
優勝の望みの薄い球団がわざと負けにいくことを防ぐため、
2022年からは下位6球団が抽選で指名順を決めることとなっています。

本ドラフトの指名対象選手はアメリカ・カナダ・プエルトリコのアマチュア選手に加え、
アメリカ合衆国領土に1年以上居住し、現地の学校に通っている選手も対象となります。
日本人選手では加藤豪将選手が2013年ヤンキースから2巡目(全体66位)指名されたり、
現役大学生としてはスタンフォード大学の佐々木麟太郎選手の指名が注目されています。

このようにMLBのドラフトについては頻繁に全体○○位という表現が使用されます。
MLBが全30球団あり、同じ1位指名でも全米1位と全米30位では
NPBでいうところの1位と3位程度の差があるため、その点をわかりやすくする上での表現となります。

しかし、上記の加藤豪将選手がヤンキースに2位指名を受けたのにも関わらず、
全体66位(60位以下)と表現されているのはどうしてなのでしょうか。

その理由はMLBの「補償指名」「コンペティティブ・バランス・ピック」制度が関係しています。
簡単に説明するとFAで主力選手を放出した球団や、MLB機構が指定した小規模市場の球団に対して
各指名の間に特殊な指名権を与える制度です。

上記加藤選手の場合には補償指名やバランスピックが1巡目と2巡目の間に30件以上入っていたため、
ヤンキースの2巡目指名は全体66位になっていたということになります。

このシステム自体も「バランスピックの指名権をトレードできる」など奥深い部分があるのですが、
その点に関してはまた別の記事で紹介させていただく予定ですので、お楽しみに!!

(2)トレード

7月のMLB球団の動きとして最も注目度が高いのがトレード制度です。

MLBではトレード期限が毎年7月28日から8月3日のどこかに設定され、
各球団が「今シーズンの地区優勝/ワールドシリーズ制覇に向けて戦力を整えるか
「今シーズンは諦めて主力選手を他球団に放出し、将来性の高いプロスペクトの獲得を進めるか
上記の選択に迫られることとなります。

特に主力選手のFAが控えている球団はその年限りで退団される可能性が高いため、
積極的にトレードに動く傾向にあります。

特に自分の推し球団がプレーオフや地区優勝を争っている際に
超大型トレードを成立させた場合には大いに沸くこと間違いなし
です。
NPBにはないトレード文化により日本とは全く異なる楽しみ方もできるのがMLBの特徴です。

また、トレード補強した選手のロースター枠を空けるためにDFAが多く行われるのもこの時期です。

4. シーズン終盤(8月〜11月) プレーオフとロースター拡大

終盤戦はプレーオフ争いが激化。ロースター枠も拡張され、若手の昇格や戦力強化が行われます。

  • ロースター拡大:9月から28人まで登録可能。
  • プレーオフ:ワイルドカード→ディビジョン→リーグチャンピオン→ワールドの順で実施。

(1)ロースター枠拡大

本来26人だったロースター枠は9月から28人に拡大し、
各球団積極的に新戦力の活用ができるようになります。

優勝争いをする球団は投手枠を拡大することで疲労のたまった投手陣の負担を軽減
下位球団は来シーズン以降での飛躍のため、プロスペクト選手の昇格を実施します。

どちらにしてもMLBファンにとって新たな新星の登場に期待でき、
伸び悩んでいた球団が1人のスター選手の登場でシーズンを駆け上がっていく姿はロマンを感じます

(2)プレーオフ

シーズンを戦い抜いた球団の内、アメリカンリーグ/ナショナルリーグの各6球団が
プレーオフへとコマを進めることとなります。

プレーオフに出場する球団は各地区(西区/中区/東区)の優勝チーム
地区優勝球団を除く各リーグにおける勝率上位3球団となります。
なお、勝率上位3球団としてのプレーオフ進出はワイルドカードと呼ばれます。

プレーオフは最大53試合が実施され、下記の順で行われていきます。

ワイルドカードシリーズ

リーグ3位の勝率の球団とワイルドカード3球団が戦う2勝先取のシリーズ。

ディヴィションシリーズ

ワイルドカードシリーズの勝者とリーグ1位2位の勝率の球団が戦う3勝先取のシリーズ。

リーグチャンピオンシリーズ

ディヴィションシリーズの勝者同士が戦う4勝先取のシリーズ。

ワールドシリーズ

各リーグのリーグチャンピオンが争う4勝先取のシリーズ。

ワールドシリーズを制するには最低でも11勝が必要で、
ワイルドカードで選出されたチームの場合は最大22試合も戦う可能性があります。

全30球団もあるMLBを制した際にはファンの喜びもひとしおです。
選手たちはワールドシリーズ制覇を経験するために自分の市場価値を高めて有力な球団に移籍したり、
はたまた愛着のある球団で長期契約を結んで、チームを引っ張っていくなど
様々な姿を楽しむことができます。

球団側も豊富な資金力を生かして有力な選手を集めたり
トレードやプロスペクト選手の育成でチームを作り上げたり様々な特徴があります。
各球団ごとの特色も別記事でまとめる予定ですので、お楽しみに!

球団独自の経営方針が気になる方は
低予算で「オークランド・アスレチックス」を競合球団に導く
ノンフィクション映画作品「マネーボール」も非常におススメです。

5. シーズンオフ(12月) FA・契約更改・ルール5ドラフト

レギュラーシーズン終了後は移籍や契約交渉の季節となり、選手の移籍がより活発になります。

  • FA:6年以上メジャー在籍で取得。人気選手には複数球団が競合。
  • 年俸調停:3年〜6年未満の選手が対象。調停により年俸が決定。
  • ルール5ドラフト:40人ロースターに入っていない若手選手を他球団が指名できる制度。

(1)FA

MLBはNPBとは異なり、FAの規定日数メジャーでプレーした選手は自動的にFAとなります。
NPBはFA権取得者がFA宣言するがどうかがまず争点となるため、
MLBはむしろ移籍を前提とした制度設計になっていることが伺えます。

また、一度FAした選手は現在の契約が切れたタイミングで自動的にFAとなります。
そのため1人の選手が野球人生の中で複数回FAとなり、
様々な球団を渡り歩くことも少なくありません。

FAとなった選手はワールドシリーズ終了後の5日間で所属球団との独占交渉期間を迎えることとなり、
球団はその選手に対して「クオリファイング・オファー」と呼ばれる
1年契約のオファーを出すことができます。

ただしその際の年俸はMLB年俸上位125選手の平均年俸から算出されることとなっており、
FAする選手の希望額を下回っているケースがほとんどの状況です。
そのため、この「クオリファイング・オファー」は拒否される前提
制度設計になっているとも言えます。

推し球団の所属選手が「クオリファイング・オファーを拒否した!」という報道が出ても、
FA後に所属球団と交渉することも可能ですので、ゆっくり状況を見守りましょう。

FA交渉の際には金額/契約年数以外にも下記のようなオプション交渉も行われます。

選手側が有利になるオプション
プレイヤーオプション:選手側が契約終了後に契約の延長を要求できる権利。
オプトアウト権:選手側が契約の途中で既存の契約を破棄できる権利。
似たような権利に見えますが、
「プレイヤーオプション」は短中期契約(3~5年)のプラスアルファとして用いられ、
「オプトアウト権」は長期契約(5~10年)の中で選手側がより良い契約を引き出せると感じた時に
既存の契約を破棄できる制度
として活用されるケースが多いです。

なお、大谷翔平選手はドジャースとの契約の際に上記のようなオプションを設定していません。
ただしドジャース側に特定の人事異動(オーナー/編成責任者の変更)があった際には
「オプトアウト権」
が発生することとなっています。
これは二刀流に対する球団の考え方が変わるリスクヘッジをしていると推測されます。

★球団側が有利になるオプション
チームオプション:球団側が契約終了後に契約の継続を選択できる。
※契約を破棄する場合には一定の金額を「バイアウト」として選手に支払う必要がある。

その他にもトレード拒否権や結果に応じて出来高を受け取れるインセンティブ契約などがあります。

(2)ルール5ドラフト

「ルール5ドラフト」はNPBの現役ドラフトの手本になった制度とも言われていますが、
本制度では5シーズン以上(18歳以下で入団)もしくは4シーズン以上(19歳以上で入団)を
マイナーで過ごした選手が対象
となり、強制的にドラフトの対象となります。

MLBの制度ではロースター枠に入った選手はFA/年俸調停など数々の権利で保護されていますが、
それだけだと有望な選手がマイナーで塩漬けに合う可能性があるため、
他球団で飛躍のチャンスを与えられるようにするための制度と言えます。

まとめ

本記事ではMLBに関する基本的な制度を
NPBとの比較を中心に取り上げてきましたが、いかがでしたでしょうか。

MLBのロースター制度やルールはNPBと比べて複雑ですが、
それだけに戦略の幅が広く、選手ひとりひとりの物語性も際立っています。

推し球団のスター選手や期待の若手が他球団に移籍することはさみしい部分もありますが、
MLBの各種制度は一人一人の選手を守り、その選手が最大限評価される環境を整えるためのものです。

NPBファンの方がMLBの世界に足を踏み入れる一助となれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
記事の中での不明点や深堀してほしい内容などあれば是非コメントで教えてください!!

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