最近、日本でもMLBが取り上げられる機会が増えてきました。筆者も20年間NPBを追いかけてきた身ですが、MLBの規格外の才能や文化に心を動かされ、今では日々チェックしています。
そんな中で筆者が惹かれたのが、フェルナンド・タティス・ジュニア(Fernando Tatis Jr.)です。強烈な打撃、躍動する走塁、華麗な守備……まさに“MLBのスーパースター”として成長したその姿は、実は「ドラフト外」という意外な出発点から始まっていました。
ドラフトされなかった?――父のコネではない“実力”
タティスJr.は、元MLB選手フェルナンド・タティス・シニアの息子。いわゆる「野球エリート」でしたが、2015年MLBドラフトでは名前すら呼ばれませんでした。なぜなら彼はドミニカ共和国出身の国際フリーエージェント(IFA)だったからです。
アメリカの高校・大学を経ないため、ドラフト制度の対象外。代わりに、16歳の時点でシカゴ・ホワイトソックスと170万ドルで契約。ただ当時は“守備に難がある長打力のある素材型”という評価にとどまり、「将来メジャーでスターになれる」とまで見ていたスカウトは少なかったとも言われています。
予想外の移籍――パドレスが“目利き”を発揮
2016年6月、ホワイトソックスはジェームズ・シールズとのトレードでタティスJr.をサンディエゴ・パドレスに放出。このトレードが後に「近年最大級の一方的トレード」として語られることになります。
当時のタティスJr.はプロスペクトとして無名に近く、多くのスカウトやファンは「聞いたことない選手が来た」と思ったはずです。
しかしその後、マイナーリーグで一気に才能が開花し、2018年にはMLB全体のプロスペクトランキングでトップ5入り。20歳でMLBデビューを果たします。
デビューと覚醒:2019〜2021
- 2019年:.317・22本塁打・16盗塁と衝撃的なデビュー。打撃のインパクトに加えて、全力プレーや派手なパフォーマンスで人気爆発。
- 2020年:コロナ禍で短縮されたシーズンながら、MLB全体の顔として成長し、プレーオフでも活躍。
- 2021年:肩の不安を抱えながらも42本塁打・25盗塁。NL本塁打王に輝き、スター選手として完全に地位を確立しました。
また2021年には、パドレスと14年3億4千万ドルという球団史上最大契約を結び、若干22歳にして“フランチャイズプレイヤー”として未来を託されました。
2022年:試練と復帰への道
しかし順風満帆には進みませんでした。
- バイク事故による手首骨折
- 復帰直前のドーピング違反(PED)による80試合出場停止
この出来事によりファンの信頼は大きく揺らぎ、MLB全体からも「成熟を求められる存在」として注目されることになります。
2023年〜現在:復活と新境地
復帰後の2023年、タティスJr.はかつての遊撃手ではなく、右翼手として守備の名手に変貌。守備指標でリーグトップクラスの数値を叩き出し、ゴールドグラブ賞とプラチナグラブ賞をダブル受賞。
同時にバッティングも戻りつつあり、2024〜2025年も打率.270前後、本塁打20〜30本、盗塁20以上を記録し続けるオールラウンダーとして再評価されつつあります。
タティスJr. 年度別主要成績
年 | 試合 | 打席 | 安打 | 打率 | 本塁打 | 打点 | 盗塁 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
2019 | 84 | 372 | 106 | .317 | 22 | 53 | 16 |
2020 | 59 | 224 | 62 | .277 | 17 | 45 | 11 |
2021 | 130 | 546 | 135 | .282 | 42 | 97 | 25 |
2022 | – | – | – | – | – | – | – |
2023 | 141 | 575 | 149 | .257 | 25 | 78 | 29 |
2024 | 102 | 398 | 110 | .276 | 21 | 49 | 11 |
2025* | 82 | 359 | 81 | .258 | 15 | 38 | 17 |
*2025年は6月末時点の記録。
まとめ:指名外からMLBの顔へ
タティスJr.は、ドラフトにも名前が呼ばれず、見知らぬ素材選手としてスタートしました。しかしそこから圧倒的な実力と存在感で、MLBの“顔”として返り咲いた奇跡のようなストーリーは、野球ファンなら誰もが心を打たれるはずです。
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